食物アレルギー
食物アレルギーの種類
食物アレルギーは、特定の抗原を食べることで免疫応答を生じる体質の病気です。食物アレルギー自体の種類はいくつかありますが、かなり頻度が高いものは以下の3つです。
即時型

一般的な、アレルゲン摂取によって蕁麻疹やアナフィラキシーなどを起こすタイプです。年齢層ごとに頻度の高いアレルゲンは大きく変わりますが、小児では卵、木の実、牛乳などが多いです。
摂取によってほとんどの場合2h以内に症状が現れます(一部2hを超える遅発型もありますが)。
具体的には、蕁麻疹や皮膚のかゆみ・赤みなどの皮膚症状、目や唇の腫れ・かゆみなどの粘膜症状、腹痛・嘔吐・下痢などの消化器症状、咳・呼吸苦・喘鳴などの呼吸器症状、血圧低下・失神などの循環器症状、眠気・意識障害などの神経症状が出現することがあります。
食物蛋白誘発胃腸炎症候群(FPIES)
いわゆる消化管アレルギーの一種で、典型的にはアレルゲンを食べてから1-4時間後くらいに嘔吐や下痢、腹痛、顔色不良などの症状を呈します。アレルゲンとしては日本では卵黄が多いですが、小麦、大豆、魚などもきたすことがあります。皮膚症状や呼吸器症状をきたさないため、最初のうちは食物アレルギーと気づかれないことも多いです。多くは乳児期の離乳食開始して少ししてから発症しますが、魚などは幼児期に発症することもあります。
花粉食物アレルギー症候群(PFAS)
| タンパクの種類 | 原因の花粉 | 症状の出る食物 |
| PR-10 | ハンノキ、シラカバ | バラ科の果物(リンゴ、モモ、サクランボなど) ヘーゼルナッツ 大豆 など |
| プロフィリン | イネ科、ブタクサ、ヨモギ | メロン、スイカ、キュウリ、トマト、バナナ、アボカド、オレンジ など |
| GRP | スギ、ヒノキ | バラ科の果物、柑橘類 など |
はじめにハンノキ花粉やスギ花粉などへの花粉症になり、それらと似た構造のタンパク質を持つ果物や野菜で症状をきたすようになるタイプの食物アレルギーです。
PR-10やプロフィリンが原因タンパク質の場合、口の中の痒み、唇の腫れといった症状が中心になるので、口腔アレルギー症候群と呼ばれることもあります。
ただ、GRPが絡む場合は、アナフィラキシーなど強い症状が出ることがあることも分かってきたので、口腔アレルギー症候群という名称は語弊があるかな、と思います。
PR-10, プロフィリンは熱に弱いので、缶詰やジャムなどの形では症状が出ないことも多いです。一方、GRPは加熱してもアレルゲン性があまり低下しないというのも特徴です。
食物アレルギーの検査
食物アレルギーが疑われるエピソードがあった方には、診断目的で検査をおすすめしています。血液検査以外での検査は抗ヒスタミン薬やロイコトリエン受容体拮抗薬などの飲み薬の影響を受けるので、前日から内服は中止した状態で実施します。
プリックテスト
エキスや食べ物を爪楊枝のような針につけて、それで皮膚をおす検査です。押した所が蚊に刺されたみたいにかゆく腫れたら、アレルギー反応があると判断されます。
血液検査
アレルギー反応の有無と程度が判断できます。結果は数日かかります。
注意点としては、血液検査で反応している=アレルギー確定ではありません。採血では反応があっても、実際はアレルギーではないことは多いです。ただ、アレルギーがありそうかどうかの目星は付けられることが多いです。
食物経口負荷試験
アレルギーが疑わしい、あるいはアレルギーがあると分かっている食べ物(被疑食品)を医療機関で食べる検査です。以下のような目的で行われます。
・アレルギーかどうかの診断目的
・アレルギーではないよね、ということの除外目的
・どれくらいの量なら安全に食べられるかを調べる目的
・経口免疫療法という治療の適応があるか調べる目的
あくまで症状が出た時に即座に対応できる医療機関で行う必要があるので、自宅ではできません。当院でもリスクが低~中くらいの食物経口負荷試験を実施しています(予約制)。
食物アレルギーの症状が出た時の薬(おまもりの薬)
食物アレルギーで症状が出た時の薬は一般的には抗ヒスタミン薬とアドレナリンの2種類です(一部サルタノールなどのβ刺激薬やプレドニンなどの経口ステロイドを使う方もいますが、これは特殊なケースです)。なお、FPIESはこれらの薬は効かないことに留意が必要です(FPIESで症状が強い時は点滴が必要です)。
抗ヒスタミン薬
レボセチリジンやオロパタジンなどの薬です。即時型食物アレルギー、PFASの方は必ず持っておくようにしましょう。皮膚症状や粘膜症状が得意で、30分くらいで効いてきます。
アドレナリン製剤(エピペン、ネフィー)
重症な状態や重症かもしれないときに使う薬です。即効性はありますが、効果が消えるのも早いので、いったんアドレナリンで良くなっても効果が切れてぶり返すということはよくあります。あくまで病院までの繋ぎという位置づけです。つまり、アドレナリンの使用と救急車はセットとお考え下さい。
以前は注射(エピペン)しかありませんでしたが、今は鼻スプレータイプ(ネフィー)も販売されました。
食物アレルギーの症状が出た時の対応
即時型食物アレルギーやPFASでは、症状が出た時の対応は重症度によって異なります。症状は軽症で始まっても、経過とともに中等症や重症に移行することもあります。症状が出た時の対応は、下の表を参考にして下さい。
| 重症度 | 主な症状 | 初期対応 |
| 軽症 | 口周りの赤み、少しの蕁麻疹、軽い腹痛、喉のかゆみ、まぶたの腫れ | 30分以上しても改善しないなら抗ヒスタミン薬を内服 |
| 中等症 | 全身の蕁麻疹、顔全体の腫れ、2回くらい嘔吐、強めの腹痛、咳、喉の痛み | 抗ヒスタミン薬を内服して医療機関を受診 |
| 重症 | 息苦しさ、声枯れ、喘鳴、強い腹痛、頻回な嘔吐、顔面蒼白、意識障害 | (あれば)エピペンやネフィーを使用し救急要請 |
FPIESでは、2回以上嘔吐している、顔色が悪い、腹痛が強い、なかなか症状がひかないなどあれば、点滴が必要なこともあるので医療機関を受診するようにして下さい。
食物アレルギーの経過
卵、牛乳、小麦、大豆などの即時型アレルギー、FPIESは幼児期の間に良くなることが多いです。卵、牛乳、小麦などの即時型アレルギーは幼児期で8割位が良くなりますが、アナフィラキシー歴があるや、数値が高い状態が続く、などあれば治りが比較的悪いです。一方、ナッツアレルギーやPFASなどは詳しくは分かっていませんが、一般的には治りが悪いと考えられています。
当院では、通常Stepwise OFCという手法をとっています。つまり、少ない量や加熱がしっかりされた食品の食物経口負荷試験を行い、それが取れれば次の量の食物経口負荷試験に進みます。症状が出てしまったら、しばらくは症状が出ない量を上限に自宅で練習してもらい、時間を空けてまた食物経口負荷試験を行い、体質が改善したか評価します。
基本的には食物経口負荷試験で安全性が確認された量を上限に食べてもらい、自宅で増やすということは一般的にはしないようにして下さい。
超重症例では、経口免疫療法という毎日少量の食品を食べることで体質改善を目指す治療が行われますが、研究レベルの治療であり、実施している医療機関は少数です。適応がありそうであれば、実施している医療機関に紹介します。
生活上の注意
食物経口負荷試験で安全と確認できた範囲では摂取したほうが良いと考えられていますが、安全な量が不明な場合は除去をするようにしましょう。体調不良時、疲れている時、生理前などは症状が出やすく、旅行先などでも症状が出ては困るので、摂取しないようにし、調子がいいときだけ食べるようにしておいて下さい。
誤食を避けるために、加工品の原材料表示を見る、外食時はアレルゲンが入っていないか確認して下さい。
ただ気をつけていても、誤食は100%は避けられないので、おまもりの薬は常に持ち歩くようにしましょう。
よくあるご質問
離乳食開始前や就学前にアレルギーの検査を受けたほうが良いですか?
通常ルーチンでの検査はおすすめしません。検査で全てのアレルゲンが調べられない上、反応があったとしてもアレルギーとは限りません。一方、反応が確認されたら負荷試験をしていくことになり、離乳食の進みが遅れたり、不必要に避けたりすることにつながってしまいます。特に離乳食の遅れは逆に食物アレルギーの発症のリスクになる可能性もあります。
エピペンやネフィーは持っておいたほうが良いですか?
アナフィラキシーや重症な症状のエピソードが出た方には持つことをオススメしています。それ以外の方では通常持っておく必要はありませんが、アレルゲンが多いや、血液検査上の数値が非常に高い場合は要相談です。
食べたほうが食物アレルギーは治りやすいのですか?
明確なエビデンスはありませんが、経口免疫療法などで毎日食べる方が最終的に摂取できるようになる方が多いです。可能な範囲で食べたほうが治りが早い可能性はありますが、まだ正確には分かっていません。
食物アレルギーは予防できますか?
乳児期早めに繰り返し食べている方がアレルギーになりづらいという研究結果は複数あります。また湿疹が悪いと、食物アレルギーになりやすいと考えられていて、湿疹を徹底的にコントロールしたほうがアレルギーになりづらいという研究結果もありますが、逆に保湿剤をしっかり塗っている方がアレルギーが増えたという報告もあります。
どれくらい食べられれば園や学校で解除になりますか?
年齢やアレルゲンによって異なりますので、ご相談下さい。
